第37回 こどもの難病シンポジウム

慢性疾病のある子どもの自立支援を考える

 2711日から施工された小児慢性特定疾病事業での自立支援事業を 政治、メディア、患者の家族、患者団体、看護婦の立場からの講演でした。

座長は(国保松戸市立病院診療局小児医療センター小児科・小児集中治療科)三平元先生

小児慢性特定疾病児童自立支援事業について  (厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課) 一ノ瀬篤課長

 今回新しく出来た小児慢性特定疾病児童自立支援事業についての説明がありました。相談支援事業および個別の自立支援計画の作成を行う支援員の配置えお必須事業としその他のレスパイト等、地域での任意事業を進める意義など。

 

・新しい小慢制度への期待と不安    (読売新聞東京本社編集局医療部) 坂上博次長

 先日の日本小児医療政策研究会で語られた内容と重なりますが、    己負担の負担感、②医療費助成以外の相談支援、③支援の地域差、④自立支援員の活躍、⑤「慢性疾病児童地域支援協議会」、「指定医や指定医療機関」の活動状況、⑥「指定医」「指定医療機関」の活動状況、⑦20歳以降のトランジション問題の解決は?

⑧小慢で治療法開発への拍車、⑧小慢の認知度の向上などについて話されました。「難病は誰もがなるかもしれない、ひとごとでなくみんなで考えること」を記事で常に訴えていきたいとおっしゃっていました。

 

・慢性疾病のある子どもが自立・社会参加するために経験しておきたいこと (病気の子供の学習・復学支援ポケットサポート) 三好祐也さん

 ご自身が5歳から中学2年生までほとんどの義務教育を病院生活にて送られた経験があり、大学時代から現在に至るまで、院内学級や様々な場所で病気の子供たちへ学習支援を行われています。

入院生活を強いられる慢性疾病の子供たちが経験不足がちな社会生活をどのように学んでいくか。異なる病気、年齢の子供たちは互いに思いやりを学び、辛さを伝え合うことでストレスを放出します。未来を信じる力が子供たちを頑張らせてくれます。

子供の時から少しづつ親任せではなく自分自身で内服管理、体調管理をできるように、人任せでなく自分で選択していく力、決断する力を養っていく必要があります。受身の患児から主体になる患者へ。

 

・母子家庭でも出来た在宅生活 そして今後、願うこと (生まれてすぐに人工呼吸器を装着した子供の母親) 大森さとみさん

 小学3年生の息子さんは先天性ミオパチーで、7ヶ月の時に医療事故から肢体不自由になってしまいました。子供の療育の向上のため離婚を決意された大森さんでしたが、息子さんとの今の生活を心から楽しんでいらっしゃいました。そこに至るまではいろいろな苦労がありましたが

生活環境を整えレスパイト施設や訪問療育、訪問PTヘルパーステーション、通所施設などを利用。訪問看護でヘルパーさんに入浴の手伝いや外出時の様々な補助も受けられています。そのような支援の充実は、お母さんの笑顔につながり、それは病児の心にも反映します。

大森さんは考えます。 限り有る命の中でもたくさんの経験をさせてあげたい。社会に認めてもらうために積極的に外出をする。最近では好きなアーティストのライブにも親子で参加されたそうです。

 

・慢性疾病のある子供への様々な支援の連鎖について  (日本結節性硬化症学会ファミリーネット委員会) 中村幸代さん

 15歳の息子さんは生まれてすぐ結節硬化症のの診断を受けました。乳幼児期の不安や孤立、就学前のサポートは薄く、療育相談など自ら行動して情報を得ました。学齢期は様々なサポートがありましたが、人手不足で時に不公平さも感じられました。卒業後はトランジションの問題がありますし、

地域の理解とサポートが不可欠と感じられてます。病児と家族だけが問題を抱え込み孤立することがないよう、医療、保健、教育、福祉等縦割りでなく垣根を越えた支援体制が理想です。それをつなぐ者として、地域コーディネーター等が必要であると考えます。

 

どんなハンディキャップがあっても地域であたりまえに豊かに暮らす  (NPO法人ほうずきの会理事) 松崎利惠子さん

 松崎さんのお嬢さんは結節性硬化症の患者さんですが今年成人式を迎えられました。常時要介助の生活でしたが小学校6年の時に「ほうずきの会」に入会。ほうずきの会は「ハンディキャップを持った子供たちが地域に生きる」をサポートする会です。2002年にNPO法人取得。

まさに成功した自立事業の今をみせてくれました。1000名のボランティアがおり、様々な活動を支援しています。子供たちの放課後デイサービスは年齢に合わせた活動を行います。、外出を通し社会マナーを学ぶことも。成人向けの「ポテトの会」は週1の宿泊や会員で旅行に行ったりと笑顔のあふれる活動を行っています。 「生きる力とは生活をすることから」をモットーに行政、各地域福祉の支援をうけて人生を明るく送れる市域社会づくりをされています。

 

・慢性疾病のある子供たちへの自立に向けた病院で支援  (埼玉県立小児医療センター 看護部) 近藤美和子さん

 医療の現場から慢性疾病を抱えた子供たちの自立をどうのようにサポートしていくかを提案してくださいました。

小児医療の現場で成人への移行期ケアは残念ながら十分とは言えません。しかし、医療機関だけでなく家庭や学校との連携の取り組み、年齢に合わせた幼少期からの継続的な支援が重要だということです

 

 回、多方面からの子供たちの自立支援についてお話を伺いましたが、そのなかで「子供たちの人格の尊重」が何より大切であると感じました。

病気や症状、取り巻く家庭環境、医療現場は様々ですが、過干渉から子供自身の力を封じてしまうことがあるということ。

成長していく子供たちが病気と共存していくために、まずは心の自立が大切だと感じました。

そのためには私たち大人が、手を差し伸べるだけでなく、遠くから見守ることの大切さを感じます。